長めの話を置いています
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クヅカ4
 ひとつ息を吐いた。ごぼりと空気のかたまりがゆっくりと昇っていき、いくつもの小さな粒がそれに続いた。見上げた空には水面があって、夏の真っ直ぐな日差しを切り取り、ゆがめている。形を変えられ細切れにされた光の群れはとてもきれいなのだけれど、ずっと見つめていると何故だかひどく不安になった。
 光は砂を白く照らし、小さな波の影がそれに映った。砂の床は水の底で、流れる水に合わせて砂はゆるやかに動く。砂が膝や足の指をくすぐる。揺れる水面が光を弄ぶ。左手を伸ばして平泳ぎをするように水をかくと、今までの流れが乱れ、水と水面がまた細かく揺れる。砂の動きが変わる。
 また、ごぼりと空気が昇っていく。見知らぬ誰かが仰向けに寝転がっている。それらは見渡す限りに幾人もいて、ただ静かに空気を吐いている。五人、十人、二十人、四十人、八十人……、ごぼりごぼりと口から次々と空気のかたまりを吐いている。かたまりは水を昇りながら形を変える。水に丸まり、伸ばされ、ゆがめられる。それでもかたまりは水面を目指して昇り続ける。
 空気をすべて吐き終えた者から砂になっていく。人の形をした砂が、揺れて流れる水に少しずつ溶けていき、やがて平らになる。人型の砂はやがてただの砂になる。
 砂になるのがいやなのであれば、空気を吐き終える前に砂の床を蹴り、水面の上に顔を出せばよい。水面の上で空気を得て、また水の底に戻ってもよいし、あるいはまたどこか別の場所を目指してもよい。
 体を後ろに倒して仰向けになり、細切れの光を見つめながら、ごぼりとまたひとつ息を吐いた。ゆっくりと昇っていくかたまりを見つめているうちに、ふと気まぐれを起こし、立ち上がり、そっと砂の床を蹴った。体が砂から離れ、水面が近づく。
 何故そんな気まぐれを起こしたのか、わからない。自分の中のどこにもその答えはなかった。
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